祖母が語った不思議な話・その参拾捌(38)「夢見」

 私が小さい頃、明治生まれの祖母がちょっと怖くて不思議な話をたくさん聞かせてくれました。少しずつアップしていきます。
チョコ太郎

 「夢見が悪かったから海には行かない」

 私が小学校低学年の夏、家族で海水浴に行くはずの朝に母がそう言い出した。
 楽しみにしていたので繰り返し説得したが、がんとして譲らない。
 困ってしまって祖母に相談した。

チョコ太郎

 「どんな夢か聞いたかい?」
 「それが変なんだよ。貝掘りしていたらすごくいっぱい貝が獲れる夢なんだって」

 それを聞いた祖母は何かを思い出したような顔になり、母とひと言ふた言話したのちにこう言った。
 「今日は行かない方がいいね」

チョコ太郎

 何が何やら分からずポカンとしていると祖母が話し出した。

 「戦争が終わって数年して今の家に越して来たのは知ってるね。本当はもう少し後に引っ越すはずだったんだけど、おばあちゃんが家族や親戚を説得して早めたんだよ」
 「なんで早めたの?」
 「変な夢を繰り返し見たんだよ」
 「どんな夢?」
 「近所に大きな川ができていて、ものすごい数の魚が群れているという夢。それも幾晩も見てね、いやな気持ちがどんどん大きくなっていったのさ」
 「それでどうなったの?」

 祖母は麦茶をひとくち飲むと話を続けた。

チョコ太郎

 「半年後に歴史に残るくらいの大水が出て、住んでたあたりはほぼ全滅だったよ。夢見が良い…夢見が悪い…眠って意識の壁が無くなるといろいろなものを感じるのかもしれないね」

 そう言いながら祖母は新聞の切り抜きを見せてくれた。大災害の記事には越す前に住んでいた地域の無惨な写真が載っていた。
 夏真っ盛りなのに体が冷たくなったような気がした。

あわせて読む
祖母が語った不思議な話・その拾捌(じゅうはち)「新しい宿」
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