とんこつの里に帰って来た!コッテリ学ぶ博多ラーメン再入門☆一蘭の巻

ぼくが初めて一蘭のラーメンを食べたのは、東京の六本木。このブランドが大きく全国展開し始めた後のことだった。したがって一蘭が早良区にあった創業時代はおろか、小郡で全国でも珍しい会員制のラーメン店として存在していた時代も、現社長(吉富学氏)が後継者に指名された後に開いた那の川のお店のことも知らない。
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というわけなので、東京でも噂には昇っていた一蘭の「九州以外で初めての店舗」だった六本木交差点近くの店舗(2001年開店)に初めて入った時、まず「味集中カウンター」というあの特異なシステムにエラく驚いてしまった。そして独特の甘さがあるスープと、他では見たことがなかった辛味だれ(秘伝のたれ)の組合せに面食らって、数字ははっきり覚えていないが、つい辛味だれをかなり増量気味でオーダーして、後で“大変なこと”になってしまったことも忘れられない(笑)。
 
那の川の店から福岡の人気店になり、全国進出していくにあたって、この「味集中カウンター」や秘伝のたれで味を調整、といった個性的なシステムが生む話題性はかなり強力な武器になったらしく、東京進出の頃にはいち早くそのシステムを真似たと思われる類似店(康竜)が先に東京に出現し、一蘭側から裁判を起こさざるを得ないような事態にもなったほどだ。当時の報道をさかのぼって読んでみると、どうもその「東京先発店」を作ったのは、一蘭の元社員らしく、やはりラーメンの世界ではこうした御家騒動的な事件が付きものなのだな、ということを改めて思い知らされる。
 
今回、中洲川端にそびえ立つビルの1~3階にある現在の一蘭の総本店ではなく、天神西通り店に向かったのには理由がある。一蘭天神西通り店でだけ出されるメニューを食べるためだ。
 
それにしても一蘭の看板はデカい。西鉄福岡駅から岩田屋の本館と新館の間の通りを西通り方面に歩いていくと、その丸くて赤くてどデカい看板が目に飛び込んで来る。

福岡にある一蘭はどこもそうなってるような気もするが、この看板の目立ち方は、渡辺通り一丁目交差点の「霧島」のネオン看板並みじゃないかと個人的には思っている(笑)。

問題の西通り店限定メニューは「釜だれとんこつ」。

実はこのメニュー、お土産としては各店舗で買えたりするのだが、店舗内で食べられるのは西通り店のみ。一蘭の有力店舗にはこのような限定メニューが結構あるようで、それも「味集中カウンター」システムの推進などと並ぶ、このチェーン独特の戦略なのだと思うが、最近も袋入りインスタント・ラーメンを福岡県内の店舗だけで発売したりと、話題が尽きることがない。
 
店内に入ると、席の順番を待っている間に例のカスタム・オーダーのためのシートを手渡される。このメニューの特質を見失わないように少しだけ過剰な方に触れるような頼み方をしてみた。麺はもちろん、この店の中で最も硬い「超かた」をチョイス。

一蘭独特の秘伝のたれの2倍というのは多過ぎじゃないか?と言われるかもしれない。本当はぼくの場合も、上に書いたようなイタい経験があるので怖さはあるのだが、一方で個人的に一蘭のラーメンは、この秘伝のたれなしでは甘さが極端過ぎで、辛味を多めにしてバランスをとらないと味が一方的になり過ぎるのではないかと思うからだ。いや、甘さと言い方ではダメかもしれない。一蘭のラーメンの場合、日本人が好む「旨み」の押し出しが大変強く、表現が変だが、秘伝のたれなしだと、旨みの勢いに押し切られてしまいそうな危機感を覚えてしまうのだ。
 
旨みと言えば、化学調味料(主な製造方法が変わって以降、現在は「うまみ調味料」という呼び方が推奨されているらしい)で有名なグルタミン酸ナトリウム(ソーダ)のことを思い起こす人も多いと思うが、一蘭のウェブサイトの「釜だれとんこつ」の項には、こう書かれている。
 
「その秘密は煮汁に溶け出したうま味成分の「相乗効果」。算数の世界では1+1=2しかありませんが、料理の世界ではイノシン酸とグルタミン酸が合わさるとうま味が飛躍的に強くなり、格段に美味しくなるのです」
 
前回のエントリーを書いて以来、大いに勉強させてもらっている原達郎著『九州ラーメン物語』にもこういう件りがある。
 
「日本人や東南アジアの人は、大豆や魚を原料にした醤油、魚醤のうまみであるグルタミン酸にうまみを感じ、西洋人は肉類のうまみの基本であるイノシン酸を好む。ではラーメンはといえば、豚こつ、鶏ガラからスープをとるから、イノシン酸ベースの西洋人好みの味…」
 
実はこの件りは、人気マンガ『美味しんぼ』(雁屋哲原作)からの半ば引用らしいのだが、その後こう続く。
 
「そこで多くのラーメン店がグルタミン酸、つまり化学調味料を使わざるを得ない」
 
ところがである。上で書いた「釜だれとんこつ」のお土産用に付属していたスープ入りレトルト袋の裏の成分表には、化学調味料~うま味調味料のことを指す場合に記されると言われている「アミノ酸等」の文字はない。

そう名言しているものは見たことないのだが、一蘭の枕詞として使われている「天然とんこつラーメン」には、化学調味料~うま味調味料なしに「長年の研究の末に編み出した技法により」そうした旨みを作り出している、という意味が含まれているのではないか?なんてことを推測したりもしている。
 
比較で書くのは申し訳ない気もするが、前回、丸星ラーメンで買ってきた生ラーメンの「原材料名」の欄には「調味料(アミノ酸等)」と記されていた。
 
で、話を一蘭の釜だれとんこつに戻したい。
 
価格は店頭では790円。替玉210円と合わせて、ちょうど1000円。福岡ではかなり強気の価格設定だが、他のメニューと違って四角いお重のような容器に入って出てくる。写真で見た時はプラスチック製なんだろうと思っていたが、実はこれがずっしりと重みのある陶磁器製。スープまでガッツリ飲み干したい人にとってはレンゲではどうしてもすくえないデッド・スペースが四隅にできてしまい、ちょっと不便な面があるかもしれないが、それなりの高級感がある。
 
釜だれとんこつスープのお味は、やはりいつもの一蘭のスープよりややコクが増している。一蘭側の説明によると、「“釜煮込み焼豚”を作る際に出来た煮汁を、一蘭のたれ専属職人が長年の研究の末、“釜だれ”に仕上げ」たということなので、その分イノシン酸系のうま味がプラスされ、もともとグルタミン酸系のうま味成分の強いスープと高度な(強度の?)コラボレーションが実現している、ということなのではないかと思っている。
 
おなじみのチャルメラの音が鳴る替え玉も食べ、スープも飲み干すと、このお重の底にもやはりこの言葉が記されてました――「この一滴が最高の喜びです」。

ごちそうさまでした。
 
次回は、赤のれんに行きます。お楽しみに!
 

※掲載されている情報は、2020年01月時点の情報です。プラン内容や価格など、情報が変更される可能性がありますので、必ず事前にお調べください。
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