福岡の老舗×老舗がこだわり抜いた"ごまさばのためだけの特別なタレ"

福岡テンジン大学の岩永学長が、2020年の秋を"ごまさば"研究に費やしてきた"福岡ごまさば事情"。当初は1回きりのはずだったごまさば記事が、次から次へと情報が集まり、いつの間にか3回連続の大作となりました!福岡の人が冬の訪れを感じる"ごまさば"、家庭と飲食店での味わいの違いから、素晴らしい商品が生まれています。読み終わったあなたは、きっとごまさばが食べたくなるはず!
この記事の目次
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福岡の老舗百貨店の80周年企画がキッカケで生まれた"ごまさば"専用商品とは!?

冬が到来した!福岡の飲食店にもようやく“ごまさば”の季節がやってきた!

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福岡人が近年、愛して止まない名物料理にまでなった“ごまさば”。前々回よりの『冬が旬!“ごまさば”はなぜ福岡の名物になったのか!?』、前回の『福岡の郷土料理“ごまさば”が47都道府県で食べられる!?』に続く“福岡ごまさば事情”第3弾では、福岡の老舗企業同士がコラボレーションして生まれた“ごまさば”のための商品を紹介しよう。

近年、国際的にも「住みやすい街」として評価をされている福岡市。イギリスの経済誌MONOCLE(モノクル)の「世界でもっとも住みやすい都市25選」で初めてランク入りしたときの評価は「ショッピング世界一」。

その福岡市のショッピングの中心地、天神で商業のリーダー的存在と言えば岩田屋本店である。岩田屋本店は1936年に、天神で鉄道(現在の西鉄天神大牟田線)の起点である福岡駅にターミナルデパートとして出店。戦後は「天神を都心に」と、都心会(現在は都心界)創設時からのメンバーの一員として天神の発展とともに歩んできた。

その岩田屋本店は2016年に80周年を迎え、その企画テーマは「地元!LOVE」とされた。80周年記念と銘打って様々なコラボレート商品が登場、その数は約450種類にも及んだという。そのときにこの世に生まれおちたのが、福岡の名物料理“ごまさば”のための商品だった。

創業165年を迎えた老舗ジョーキュウ醤油

そんな老舗百貨店の記念すべき80周年でコラボレートしたのもまた、福岡の食卓の味を支えてきた天神のすぐ隣、大名に本社を構え、今年、2020年で創業165年を迎えた老舗醤油メーカーのジョーキュウ醤油だった。

古くは筑前国の商家だった松村家の分家として、現在の大名紺屋町で醤油屋を創業したのが起源であるジョーキュウ醤油。福岡県内にある100を越える醤油メーカーの中でも指折りのシェアを誇り、都心部で長年商売をしていることもあり福岡市内の多くの飲食店や家庭の味を支えてきた醤油メーカーだ。

福岡の老舗×老舗が、なぜ、そしてどのように“ごまさば”のための商品をつくったのか、話を聞いてみた。

バイヤーの目利きで生まれたごまさばのためのタレ

「80周年記念は地元の逸品を扱う様々な企業とコラボレートする機会なので、後世に残るようなものを発信したかった。」

と語ったのは、株式会社岩田屋三越のプロパー社員として、生鮮三品をはじめ、加工食品や調味料などの食品グローサリーのバイヤーを務める石松瑞樹さん。

福岡県宗像の海岸に近いところで生まれ育ったという石松さんは、家庭料理として鮮魚だけでなく、余った鮮魚を甘い醤油に漬け込んだ、いわゆる「漬け」の味もよく知るバイヤーだ。

「当時はポン酢がブームだったものの、福岡を代表する料理を世の中に提案できる商品を創りたいと思いました。その中でも、福岡・博多の食卓の味をつくってきたすぐ近くにあるジョーキュウさんに声をかけさせてもらいました。」と当時のことを語ってくれた。

「福岡の名物料理になってきていた“ごまさば”ですが、多くのグローサリーの商品名で“ごまさば”と付いているものがなかったんです。そこで“ごまさば”のための商品を創りたい、そしてその商品がお客様に届くことで、福岡・博多の味を届けたい、と思ったんです。」

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こうして老舗百貨店の岩田屋本店と、老舗醤油屋のジョーキュウとの商品開発が始まったという。

こだわりは「福岡の家庭の味」を届けたい!

天神を中心に“ごまさば”を提供する飲食店を何店舗も回ったという石松さんは、ジョーキュウ醤油にこうオーダーしたという。

「居酒屋で出される“ごまさば”は、新鮮なマサバを刺身にした状態でタレに漬け込まずに提供され、その場でタレに付けて食べるライトなものが多い。これも良いが、せっかくなら福岡・博多の家庭の味としての“ごまさば”を届けられるようなタレにしたい。」と。

フクリパ:▲居酒屋スタイルのごまさば例
フクリパ:▲家庭で食べるごまさば例

当時のことを振り返って、ジョーキュウ醤油の松村社長はこう話してくれた。

「岩田屋さんからお話をいただいて、初めてコラボレート商品をつくることになりました。家庭の味の“ごまさば”の特徴は何なのかを研究した結果、コクが肝になるのでは、さらに岩田屋さんとのコラボレートでもあるということで、本社大名の江戸時代建造の蔵で仕込んでいる再仕込醤油で創ることを提案しました。」

通常、醤油を製造するときは大豆などの原料を蒸して、醸造所特有の麹菌などが入りおよそ6カ月で製造される。再仕込醤油とは、醤油をつくる工程で塩水を入れる代わりに醤油を使うという、手間も時間も倍以上かかるがうまみと香りの豊かな醤油のこと。

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こうして再仕込醤油を使って完成したのが「博多ごまさばのたれ」だ。

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ニッチだけど地元ならではの味をいつまでも

大名に本社を構えるジョーキュウ醤油の店舗には、醤油をはじめとする様々な調味料が並んでいる。その中でもいち料理である“ごまさば”に特化したような商品は他にはない。もちろん商品名も「博多ごまさばのたれ」ということで、他の商品と並べると浮いている印象がある。

ここで1つ疑問に思うことがある。

本来、調味料とは幅広い料理に使えるようなニーズに応えられるものが生き残ってきた。地元福岡の老舗百貨店・岩田屋本店とのコラボレートとは言え、2016年の80周年記念で生まれた商品として「そのときだけの商品」ではなく、なぜ今もそんなに売れているのだろうか?

ジョーキュウ醤油の松村社長はこう話す。

「岩田屋さんとのコラボレートとして製造したものの、少量のロットで再仕込醤油も使っているので製造効率は悪いです。社内でも、製造中止の声が上がったことがあるのは事実です。」

「ですが、岩田屋さんの80周年記念で買われたお客様より電話をいただいて、“ごまさば”のタレが欲しいと言われたんです。他にも定期的に買われるコアなファンがやっぱりいるのがわかり、福岡・博多の味を全国に届けられるということもあってつくり続けています。」

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そんな生産者の想いが集結し生まれた「博多ごまさばのたれ」は、消費者の声によって今もなお、ジョーキュウ醤油を扱う福岡の限られた百貨店やお土産店でしか購入できないという。

もちろん、岩田屋本店本館の地下1階にある「九州の銘店の味」コーナーにも、「博多ごまさばのたれ」は置いてある。

岩田屋三越の石松さんは最後にこう教えてくれた。

「岩田屋80周年企画で多くのコラボレート商品が生まれました。食品以外の部門からは、なぜこんなニッチな商品を企画したの?と言われたこともありました。でも、当時のコラボレート商品の中で、今でも岩田屋で買うことができ、岩田屋以外でも販売されている商品として残っているのは、"博多ごまさばのたれ"のみだと思います!」

さぁ、冬はこれからが本番だ。日本海を下ってくるマサバが脂にのるのもこれからが本番。この冬は福岡の家庭の味としての“ごまさば”を、この「博多ごまさばのたれ」で召し上がってみてはいかがだろうか?



文=岩永 真一

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