難聴の娘を保育園に入れたら… 母である私が選んだ決断とは

 現在5歳の娘は高音急墜型感音性難聴という高音が聞こえにくい状態で生まれ、生後3週間で補聴器をつけ始めました。ろう学校に月1で通っていましたが、3歳から地域の保育園へ入園する事になりました。入園してすぐ参観した時は他の子どもたちと娘との言語差もそこまで感じませんでした。その様子を見て「加配の先生もいるし、案外大丈夫そうだな」と楽観視していた私でしたが…
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難聴児との関わり方が分からない保育園の先生たち

 入園してから約半年が経った参観日。年少クラスは運動の時間、ホールで『帽子取りゲーム』をしていました。子どもたちは先生の出した「合図」を聞いて一方向に走り、鬼役の子どもに帽子を取られないように後ろに気を配っています。

 そんな中、娘だけが周りで何をしているのか分からず加配の先生と手をつないでゆっくりと外周を歩いていました。友達が帽子を取りにやってくると「何するの! 帽子返して。」 といった様子で怒っていたくらいです。

 その後の懇親会で先生から「お子さんの運動の様子はいかがでしたか?」 と質問がありました。他のママたちはわが子の成長を先生と共有していました。

 そんな中、私の頭では「娘は誰と仲がいいのだろうか?」 「先生や友達が何をしていたのか分かっていたのだろうか?」 と疑問でいっぱいになりました。

 娘は先生からの指示も全く伝わっていなければ、先生たちもその娘の態度を当たり前のように思っている様子。

 「娘はこの半年間『友達が何をしているのか』 『先生が何を言っているのか』 ということすらも理解できないまま日々過ごしていたのだろうか。」 と考え出すとキリがなく、私の順番が来た時には言葉よりも涙の方が先に出てきてしまいました。

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 実は補聴器の能力にも限界があり、音を大きくすればするほど雑音などの聞かなくてもいい音まで拾い集めてしまいます。

 また、難聴児は耳を使って「聞く」ということにものすごく集中力を使わなければならず、そのため保育園の様な雑音の多い環境では先生がよほど気を付けて話しかけてくれない限り、娘には何が起こっているのか分からなかったのだと思います。

 懇談会の後、先生たちにも「目を見てはっきりと話してほしい」「一斉に指示を出す際は娘に個別で指示を出してほしい」「友達とのやり取りがうまくいくように先生が言葉を付け足してほしい」など具体的に改善してほしいことを伝えました。

 それでも先生たちは難聴の専門家でもなければ、娘一人のために割く人手も足りなかったようで、なかなか思うようにはいきませんでした。

 早生まれの娘が4歳になる前にはいよいよ周りとの差が際立ち始めました。言語だけではなくコミュニケーションの面でもかなりの遅れでした。ここまで来てやっと「このままでは将来的にもっと友達との能力の差が広がるな」と嫌でも感じることができました。

結局は「ろう学校に通う」という選択しか考えられなかった

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 ろう学校が近隣になかったため、電車やバスを乗り継いで通う必要がありました。わが家の場合、スクールバスを利用しても通学だけで往復3時間ほどかかりました。

 毎日7時半に家を出て、遅くても午後2時には子どもを学校に迎えに行かなければなりません。ろう学校には子どもを待つ間ママたちが待機する専用の控室があるくらいでした。送迎の時間などを考えると、ろう学校に通いながら仕事を続けることはできません。

 娘が保育園に入園した頃は、仕事を続けるつもりでいた私は「補聴器をつけて聞こえているなら大丈夫だろう」という娘に対して根拠のない甘い考えがありました。

 しかし、4歳になっても数個の単語しか話さず、人の話が聞けず、ただ毎日保育園で男の子たちと一緒になって意味不明に叫んで走り回っている娘を見ていて、もうキャリア云々はあきらめるしかありませんでした。

 年少の2月にはろう学校の見学や入学の申し込みを終え、娘は年中からろう学校へ通うことが決まりました。ろう学校に通い始めるとまるでスポンジが水を吸収するかのように成長した娘。

 保育園に通っていた頃を知っている人たちは皆、娘が普通に話していることに驚きました。いまでは私も安心して娘の将来を描くことが出来るようになりました。

 ろう学校に通うママたちは難聴の子どものために毎日絵日記を書き、学校の予習復習をします。健聴児と同程度の学力、コミュニケーション能力の習得のためには母親にも相当の努力が求められるのです。

 以前、「ほっといても子どもって成長するものよ。」と子育てを終えた職場の先輩には言われました。それならば「『聞こえにくい』という、たったこれだけでこんなにも世の中は生きにくいものなのだな」とつくづく感じたのでした。

(ファンファン福岡公式ライター/ヤマウチリョウコ)

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