ある日ずっと寝付いていた親戚の○さんの訃報が届いた。
周りの誰もが「もう長くはないだろう」と思っていたので驚きはなかった。
十二、三歳だった祖母は母親とお通夜に出かけた。
「この度はご愁傷さまでございます。ご回復を祈っておりましたのに、残念でなりません」と祖母の母がお悔やみを述べたが、喪主である奥さんの様子がおかしい。
悲しみではなく、驚愕の表情で固まっている。
違和感を感じながらも焼香を済ませ、いとまを告げようとしたとき、弔問客の話が耳に入ってきた。
「病気で亡くなったんじゃない?」
「海で見つかったんだ、停めてあった舟の下から。溺死だと」
「○さんは寝たきりだったろう?」
「動けなかったはずなんだが、この家から海まで浜に足跡が残っていたらしい。それですぐに見つかったんだ」
「やっぱりなにかに呼ばれたんだ! 海に連れて行かれたんだ!」
祖母は思ったそうだ。