トキヲイキル「アリスインデッドリースクール楽園FUKUOKA」観劇リポ

 1月29日から、ぽんプラザホール(福岡市博多区)で始まった舞台公演「アリスインデッドリースクール楽園FUKUOKA」の稽古の一部とゲネプロ、初日公演を観劇してきました。
新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、一部店舗・施設で営業時間の変更・休業、並びに一部イベントが延期・中止になっている場合があります。また、外出自粛要請の出ているエリアにおいて不要不急のおでかけはお控えください。おでかけを楽しめる時の参考となりますように、少しでも安らぎとなりますように、引き続き皆様にお楽しみいただけるコンテンツをお届けしてまいります。
撮影/seiji.s

楽しむだけでも、裏の意味を探ることも解釈の余地が魅力 出演者の熱量ストレートに

 今回の作品は九州では初演ですが、すでに10年の歴史がある作品で東京を中心に何度も再演されています。シリーズ化もされ、多くの観客を魅了しています。

 出演者20人の中で草場愛(まなみ)さんだけは「アリスインデッドリースクール」の出演経験があります。稽古でもゲネプロ後の総括でも経験を伝えようと積極的に発言する姿は印象的でした。

 今回、紅島弓矢を演じる草場さんは「東京で高森朝代を演じました。難しい役でしたが多くを学ばせてもらいました。デッドリーは私にとって大切な作品です」と熱く語っています。また初単独主演の藤松宙愛さん、プロデュースにも初挑戦した岸田麻佑さんなど出演者の熱量の高さをストレートに感じる舞台でした。

撮影/seiji.s

 本作品は、ある女子高校の夏休みの登校日の出来事を描いています。突然、世界中で「死者」が動き出し、高校を襲い、先生や生徒を「食べ」始めます。動き出した「死者」にかまれた者も蝕(むしば)まれ、早晩死者と同様の行動をするようになります。さまざまな理由で校舎の屋上に集まった生徒たちが衝突や協力を重ねながら、サバイバルをかけてそれぞれの決断を下していくという物語です。映画などで度々描かれるゾンビによる世界終末ものの一つ…と捉えることができます。

 ところが観劇後、これは表面的には終末ものだけれど、実は描きたい世界は別にあるのでは、という思いが頭をもたげてきました。それが本作品の魅力の一つだと思います。

撮影/seiji.s

 登場人物は、ほとんどが高校生です。ところが2人だけ「大人」が登場します。
 私は、そこに注目しました。
 生徒を助けるため屋上にやって来る自衛官・竹内珠子(原直子)と柏村香(井上未優、井上真里奈のWキャスト)です。2人は時に力で、時に経験を語り、生徒たちの混乱を収め、未来に目を向かせます。そして「ずっとここにはいられない、わたしたちは、もう、大人だから」と語って屋上を去ります。

 その台詞から、本作品は「大人」への成長や脱皮がテーマなのでは、と感じました。
 高校生は青年期の後半にあたり、社会意識や自我意識が高まり、いらだちや反抗が増えます。就職や進学など将来の選択を迫られることもあります。そのような難題を乗り越えることが個人の内的成長につながるともいわれていますが、それまでの自己内面の純粋性との葛藤も生まれることが多いそうです。

撮影/seiji.s

 理論と合理性を追究する氷鏡庵(桜衣かれん)が「ありえない」と発した「死者(ゾンビ)」は、理不尽と不条理がはびこる大人社会、「校舎の屋上」はこれまで自分自身をそんな大人社会から庇護してくれた家族や学校の置き換えと考えることもできます。
 そのように仮定すると登場人物の言動の多くが腑(ふ)に落ちるのです。

 劇の中盤、主人公の墨尾優(藤松宙愛)はこう叫びます。「死なない! 私たちは死なない! だって、ずーっと楽しく生きるんだから」。このセリフを聞いたとき、アニメ映画「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」(高橋留美子原作、押井守監督、1984年)を思い出しました。「友引高校」と「学園祭」前日を舞台にした「うる星—」同様、今回の舞台でも「屋上(校舎)」と「文化祭」がキーワードです。「うる星—」で描かれていたテーマの一つは「終わらない楽しい今日=夢の世界」からの脱却、すなわち、高校生の諸星あたるたちが未来へ進んでくことだと思います。
 青年期から大人への脱却の葛藤、苦難は芸術にとっては永遠のテーマなのかもしれません。
 同時に大人になったとされる私たちに何かを思い出させてくれるテーマです。

撮影/seiji.s

 以上は私の感想と解釈です。
 台本にもパンフレットにも一言も書かれてはいません。
 ただ、そう解釈すると本作で描かれる「死」は大人への旅立ちや成熟となり、観劇後の気持ちが少し軽くなるのは確かです。
 本作最終盤での墨尾と氷鏡の台詞を借りると、私の解釈は「これって、たくさんある可能性の」「ひとつかもしれないし、違うかもしれない。私はそれを信じているが、それもまた可能性の一つだ」となります。
 劇場に足を運んだ皆さんは皆さんなりの解釈を楽しんでください。
 それは舞台の楽しみ方の一つだと思います。
 当然、ガールズエンターテインメントとして気楽に楽しむこともできます。
 難しい作品ですが、楽しみ方の余地があるのは本作品の大きな魅力だと思います。

撮影/seiji.s

公演は2月2日(日)まで。
 チケット完売の公演でもキャンセルが出た場合に当日券が発売されることがあります。

アリスインデッドリースクール楽園FUKUOKA

公演期間:1月29日(水)~2月2日(日)
料金:前売り4500円(S席)、4000円(A席)。当日500円増
前売り平日昼割4000円(S席)、3500円(A席)
問い合わせ:劇団トキヲイキル
Eメール:tokiwoikiruticket01@gmail.com

ライター:しげむら

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